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大阪医科大事件及びメトロコマース事件最高裁判決にあたっての声明

2020年11月10日
均等待遇アクション21事務局
kintou21@siren.ocn.ne.jp

 大阪医科大事件とメトロコマース事件で最高裁第三小法廷は、2020年10月13日、上告棄却の判決を出した。大阪医科大事件では正社員の6割の賞与と私傷病休暇の給与支給、メトロコマース事件では正社員の25%の退職金を棄却したのである。

 事件の概要をみると、大阪医科大事件は一審で敗訴したが、高裁で一部勝訴となり、@賞与を正社員の6割支給 A夏期特別休暇5日 B私傷病休暇中の給与支給が認められた。賞与については、正社員には「ほぼ一律の支給率」で出しており、職務内容や成績には連動していないと判断した。最高裁は@とBの上告を受理、Aは高裁判決が確定した。
メトロコマース事件は高裁で、労契法20条施行後の住宅手当、褒賞、退職金25%を認めたが、本給、資格手当、賞与は棄却した。退職金については、「長年の功労への報償」の意味合いがあり、正社員とほぼ同じ仕事を長期勤続してきた原告にも一部相当するとした。最高裁は退職金のみ上告を受理し、住宅手当、褒賞は高裁判決が確定した。

 最高裁では、大阪医科大事件の宮崎裕子裁判長は、正職員と原告との職務内容に共通する部分はあるものの一定の相違があり、配置転換など変更の範囲にも相違が否定できず、正社員への試験による登用制度が設けられていたことを「その他の事情」として考慮すると、原告の年収が正職員の年収の55%であることを認めながら、賞与の不支給は不合理であるとは評価できないとした。
 メトロコマース事件の林景一裁判長は、退職金の性質は「労務の対価の後払いや継続的な勤務等に対する功労報酬等の複合的な性質を有する」としつつ、「人材の確保やその定着を図る等の目的」があると判断し「業務内容は概ね共通だが、一定の相違があった」とした。登用制度の存在を「その他の事情」とし、原告らが10年前後の勤続期間を有していることを認めながら、退職金の支給についての相違は不合理とは言えないとした。しかし、宇賀克也裁判官は「売店業務に従事する正社員と原告らの職務の内容等に大きな相違はない」と反対意見を出し、退職金の相違は不合理と評価した。

 最高裁判決は、退職金や賞与の支給目的について、高裁判決の「労働への対価」という趣旨を翻し、「正社員としての職務を遂行しうる人材の確保や定着を図る」とし、企業の裁量を重視したのである。賞与、退職金という金額の大きい賃金項目で格差是正が図られず、企業の裁量を認めたことは許しがたい。さらに未婚女性は正社員、既婚女性は臨時社員とされて差別を受けた丸子警報器事件判決の「臨時社員の賃金が女性正社員の8割以下の場合は公序良俗に反して違法」(1996年3月長野地裁上田支部判決、高裁で和解し判決以上の内容を実現)とした水準も大きく後退させ、差別是正を求める非正規労働者の願いと努力を踏みにじるもので許しがたい。

 非正規は現在約2千万人で働く人の4割弱を占め、その7割は女性である。非正規で働く女性が多い宿泊・飲食、生活・娯楽、卸売・小売各業はコロナ禍で大きな打撃を受け、緊急事態が宣言された4月から7月にかけて、女性の就業者数はそれぞれの業種で113万人、55万人、47万人減少した。総務省による8月の労働力調査で非正規は2070万人。前年同月と比べ120万人減と6カ月連続の減少となり、うち女性は84万人である。賃金の大きな項目を占める本給、賞与、退職金が、「人材活用の仕組み」と「その他の事情」という企業裁量で決められることになれば、非正規女性は低賃金で貧困状態から抜け出せなくなるのである。

 不合理な労働条件を禁止する労働契約法20条(2020年4月からパート有期労働法8条)は、@職務内容 A人材活用の仕組み(職務内容・配置の変更の範囲) Bその他の事情を考慮して判断するとされているが、「人材活用の仕組み」及び「その他の事情」は、性別、年齢、障害その他の社会的差別となる基準(間接差別)にならないか、保育や介護のニーズへの合理的配慮に欠ける基準ではないかを検討しなければならない。
 「人材活用の仕組み」は、転勤や配転など間接性差別となる不合理なものなので削除すべきである。「その他の事情」には、待遇差の考慮要素として新たに「職務の成果、能力、経験」が例示されているが、これらは企業の裁量による判断とされることが多い。結果として女性を排除し、男性正社員を中心とする差別構造を非正規にも拡げることになり、到底認められない。
 職務及び配置の変更の範囲に違いがあっても、その賃金・待遇の格差が合理的なものであるかどうかが重要であり、その検討は、ILOが示す性中立的で客観的な国際基準の職務評価を踏まえて行うべきである。

以上、今回の最高裁判決は、間接性差別に基づくものであり、到底許容できない内容であることを表明するとともに、非正規の待遇差別禁止に向けて、パート有期労働法8条の改正を求めるものである。

以上

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