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2018 年12 月25 日
東京都文京区本郷 2−27−2 東眞ビル 3 階
均等待遇アクション 21 事務局
kintou21@siren.ocn.ne.jp

「同一労働同一賃金ガイドライン」に対する見解

 

 均等待遇アクション21は2000年の均等待遇実現キャンペーン以来、「どんな働き方でも均等待遇を! 同一価値労働に同一賃金を! 間接性差別禁止を法律に! 均等法を男女雇用平等法に! 有期雇用にも均等待遇を!」の実現を求めて活動をしてきたNGO です。

 2016 年1 月から実施の第4次男女共同参画基本計画では、基本的な方針において注記の4つを目指すべき社会*1とし、その実現を通して男女共同参画社会の形成の促進を図るとしています。国連女性差別撤廃委員会からも性差別是正にむけ再三勧告が出されています。

 労働政策審議会の同一労働同一賃金部会で短時間・有期労働者関連並びに派遣労働者についての審議が行われ、11 月27 日には省令・指針の案が出され了承されました。私たちはこの省令・指針(ガイドライン)では、とりわけ登録型派遣として働く多くの女性労働者にとって同一労働同一賃金とは真逆の格差の拡大につながるという懸念を持たざるをえません。

 政府が株主である日本郵便は2018 年の春闘で労使協定により比較対象者である新一般職の労働条件を切り下げ、非正規労働者の待遇引き上げの根拠をなくしました。このようなケースが、今後蔓延することの無いよう周知徹底を求めます。

 私たちは、男女共同参画基本法の第一条(目的)、第二条(定義)、第三条(男女の人権の尊重)、第四条(社会における制度または慣行についての配慮)を踏まえ、真の同一(価値)労働同一賃金の実現を求め、今回の省令・指針(ガイドライン)について見解を表明します。

T 短時間・有期雇用労働者
1.間接差別禁止の明記

 パート・有期労働者の不合理な待遇差の原因である間接性差別にはまったくふれられておらず、ジェンダーの視点がない。パート・有期法第8 条の不合理な待遇差の3 要件(職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲、その他の事情)のうち「職務の内容及び配置の変更の範囲」は、転勤や配転など間接性差別となる要件であり、削除すべきであった。

 「その他の事情」の中から、待遇差の考慮要素として新たに例示された「職務の成果」「能力」「経験」は企業の裁量による判断とされることが多く、女性を排除し男性正社員を中心とする差別構造を非正規にも拡げることになるので到底認められない。


2.職務評価による同一価値労働同一賃金

 均等・均衡待遇規定は、職務評価による均等・均衡ではなく、企業の裁量や成果・能力を重視した均等・均衡である。待遇差の合理的理由の判断基準は職務内容を中心にするべきで、「知識・技能、責任、負担、労働環境」の4要素による「職務評価」が不可欠である。同一労働同一賃金では、正規と非正規の職務を別にしたり、非正規女性だけの職務をつくったりした場合は、賃金格差の是正ができない。

 非正規や女性の賃金格差是正は、同一労働同一賃金ではなく、ILO100 号条約に基づく性中立的客観的な職務評価による同一価値労働同一賃金でなければ実現できない。


3.ガイドラインについて

 基本給については、経験・能力、業績・成果、勤続年数などの違いに合理的理由があれば「差」を認めるとしている。しかし、経験・能力、業績・成果などを誰がどのような方法で公正に評価するのか明らかにされていない。これでは使用者側の裁量が大きく、格差を正当化することにもなり認められない。

 賞与についても「会社の業績等への貢献」に応じて支給する場合問題となるかどうかの例示があるが、基本給と同様、業績への貢献を誰が公正に評価するのかが問題である。

 手当については、役職手当、危険作業手当、交代制勤務手当、精皆勤手当、時間外手当、深夜休日手当などは同一としているが、通勤手当などの上限設定はすべきでない。

 また、退職手当 住宅手当、家族手当等の不合理な待遇の解消も明記するべきである。


4.立証責任

 説明責任の義務化では、待遇の不合理性は労働者が立証することになっている。しかし使用者の立証責任を義務化しなければ、待遇差があっても不合理とまではいえないと労働者の主張が退けられる懼れがある。使用者に格差が合理的であることの説明責任、立証責任を課すことは不可欠である。


U 派遣労働者
1.派遣先通常労働者との均等・均衡処遇の確保を

 労働者派遣法第30 条の3 で派遣先の通常労働者との均等・均衡を求めている。女性の派遣労働者の多くは登録型であり、労使協定の協議に労働者として参加できる保証もない。派遣元の労使協定による待遇決定方式は例外であることをより明確にし、派遣先労働者との均等・均衡処遇を確保すべきである。


2.審議会に示された「賃金モデル」では賃下げの懸念がぬぐえない

 厚労省が提示した労使協定方式による賃金モデルは、職安求人賃金の下限をとって平均賃金とし、また賃金センサスに基づく賃金もフルタイム労働者について特別集計した結果から、通勤手当分71 円を控除し、さらに新卒初任給を考慮して補正として12%も減額している。これでは平均的な賃金額とは言えない。最低賃金を下回る金額が記載されているケースもある。

 登録型派遣で働く女性たちは、派遣先が変わるたびにゼロ年基準値とされ、賃下げが蔓延し、生活の展望が見えない状況になりかねない。このような事がないような制度設計をすべきである。

 そもそも派遣労働者の賃金においても男女格差があり、今回の指針作りにあたってはジェンダー平等の視点を持って賃金レベルを再検討すべきであり、職務に基づいた賃金であれば、ILO100 号条約に基づく性中立的客観的職務評価を実施すべきである。


3.ガイドラインについて

 労使協定方式による待遇決定方式では、派遣先の同一業務を行う労働者との比較において、職務の遂行に必要な技能又は知識を習得するために実施する教育訓練を除き、賃金、福利厚生に関わる条件が何ら保障されない事になり問題である。

 

*1

    1. 男女が自らの意思に基づき、個性と能力を十分に発揮できる、多様性に富んだ豊かで活力のある社会、
    2. 男女の人権が尊重され、尊厳を持って個人が生きることのできる社会、
    3. 男性中心型労働慣行等の変革を通じ、仕事と生活の調和が図られ、男女が共に充実した職業生活その他の社会生活および家庭生活を送る事ができる社会、
    4. 男女共同参画を我が国の最重要課題として位置づけ、国際的な評価を得られる社会
 

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