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女子差別撤廃条約実施状況第9回報告書に我が国の現状として盛り込むべき事項

2018年10月17日

団体名/均等待遇アクション21
住所/東京都文京区本郷2-27-2 東眞ビル3F
電話番号/03-5689-2320
メールアドレス/kintou21@siren.ocn.ne.jp
執筆者/酒井 和子

2条1項a 差別撤廃義務
盛り込むべき事項
選択議定書の批准に向け時期を定めた目標を設定し報告すること。また、報告書案を作成した後に、あらためてNGOに意見の聴取をすること。


関連資料
CEDAW2016年3月7日最終見解9(c) 選択議定書の批准を検討するとともに、選択議定書の下での委員会の法体 系について法律専門家及び法執行官に対する研修を行うこと

第4次男女共同参画基本計画第12分野「男女共同参画に関する国際的な協調及び貢献」の具体的な取組にある通り、選択議定書の早期締結について真剣に検討を進めること

雇用 11条1項a 労働の権利
盛り込むべき事項
ILO111号、175号、183号、189号条約の批准の検討状況及び批准の目途について報告すること
関連資料
CEDAW2016年3月7日最終見解35(g) 「雇用及び職業についての差別待遇に関する ILO 第 111 号条約」及び「家事労働者の適切な仕事に関する ILO 第 189 号条約(2011 年)」の批准を検討すること 第4次男女共同参画基本計画第12分野「男女共同参画に関する国際的な協調及び貢献」の具体的な取組にある通り、未締結の条約等に関する検討を進めること

雇用 11条1項c 職業選択の権利並びに職業訓練を受ける権利
盛り込むべき事項
女性活躍推進法の行動計画は、@採用した労働者に占める女性の割合、A雇用する労働者の男女の平均勤続年数の差異、B雇用する労働者の一人当たりの労働時間の状況、C管理職に占める女性の割合、の4つを必須項目とし状況把握・課題分析を求めている。任意項目には男女賃金格差、男女の育休取得割合、男女の人事評価の結果における差異、上位の職階に昇進した男女労働者数及びそれぞれの割合などが入っているが、任意項目は企業の選択であり、日本企業の9割が300人以下の中小企業で、その中小企業には努力義務とされている。また女性労働者の60%近い非正規労働者を減らす施策はない。

雇用 11条1項d 同一価値労働同一報酬
盛り込むべき事項
2018年5月成立したパート有期労働者法は、@職務内容、A職務内容・配置の変更範囲が同一である場合の均等待遇確保を義務化した。これは企業が恣意的に非正規労働者を差別する「人材活用の仕組み」「企業への貢献度」により処遇が決められる仕組みを温存しているため、差別を是正できない。パート労働者の賃金のベースとなっている最低賃金は、生計費原則に立ったものではなく、2018年の最低賃金は全国平均で時給874円。このため、特に母子家庭の貧困は深刻である。シングルマザーは非正規雇用で働く者が多い。子どもの貧困率は1985年の10.9%から増加を続け、ひとり親家庭の貧困率はOECD加盟国で最悪レベルである。女性の平均賃金は男性の半分で、ワーキングプアと言われる年収200万円以下が女性労働者の4割以上を占めている。
賃金格差をもたらす要因の第1は、総合職・一般職などの雇用管理区分による間接差別が行われていることである。コース別制度では、圧倒的多数の女性が一般職に処遇されている。管理職への道は総合職のみに開かれており、コース別制度が女性の意思決定への参加を阻害している。
2013年7月広島高裁は中国電力事件で男女間の賃金・昇格に格差があることを認めながら、賃金制度の規定に男女別の記載がない、男女で明確な層に分離されていない、女性は管理職になるのを敬遠する傾向にあるなどを理由に差別を認めなかった。最高裁は2015年3月上告棄却、高裁判決が確定。
2014年7月東京地裁はフジスター事件で職務評価による格差検討の手法を認めたが、本給や一時金の格差について差別性を認めなかった。理由は企業に賃金決定の自由裁量があり、裁量を超えて違法であるとは判断できないとした。東京高裁では裁判長から基本給、職務給にも差別があるとの見解が示され、2015年2月和解で解決。労働基準監督署は、賃金格差は職種の違いによるとし、労働基準法4条違反として是正指導をしなかった。
2015年3月金沢地裁は東和工業事件で、コース別雇用管理が実質的に男女による賃金管理であり労基法4条違反とした。しかし賃金是正に当たって、年齢給は総合職の賃金としたが、職能給は是正額をゼロとし司法の判断を放棄した。最高裁は2017年5月上告棄却、高裁判決が確定。
2017年3月メトロコマース事件の地裁判決は、契約社員と職種の全く異なる正社員を比較し、有為な人材を確保するために正社員を優遇するのは差別ではないとした。現在控訴審が続いている。
関連資料
CEDAW2016年3月7日最終見解35(a) 構造的不平等や性別職務分離を撤廃するとともに、同一価値労働同一賃金の原則を実施することによって性別賃金格差を縮小するため、2015年の「 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」、労働基準法及びその他関 連法に基づく取組を強化すること
提案
@男女雇用機会均等法の間接差別の省令・指針を例示列挙とすること。雇用管理区分を指針から削除すること。A最低賃金を生活できる水準の金額とすること。B同一価値労働同一賃金の実現に向け、国際基準による職務評価制度の構築および、公的機関による価値判断の仕組みをつくること。C女性活躍推進法の行動計画の必須項目に男女賃金を入れること。

雇用 11条1項f 健康の保護及び安全
盛り込むべき事項
2018年5月成立した「働き方改革関連法」では、高度プロフェッショナル制度が創設された。これは1日8時間労働に風穴をあけ、労働者の生活時間を奪い健康を破壊する長時間労働を促進するものである。対象業務や年収は省令により、健康管理時間の把握の仕方もあいまいである。現行の裁量労働制による過労死や過労自死は中年男性だけでなく若い女性にも広がっている。
職場のセクシュアルハラスメントでは、苦情申告による二次ハラスメント、心身の健康被害、復職の困難、降格、離職を余儀なくされる、解雇や雇止などが起こっている。
関連資料
CEDAW2016年3月7日最終見解35(c) 職場でのセクシュアルハラスメントを防止するため、禁止規定と適切な制裁措置を盛り込んだ法整備を行うこと、及び妊娠や母親であることを理由とした差別を含む雇用差別の事例において女性の司法制度へのアクセスを確保すること
提案
均等法11条をセクシュアルハラスメント禁止条項に改定すること

雇用 11条2項a 妊娠等による解雇
盛り込むべき事項
女性労働者の6割が第1子の妊娠出産を契機に離職しているが、妊娠・出産・子育て中の女性に対するマタニティハラスメントが横行している。また長時間労働により妊娠を契機に離職を余儀なくされる実態が改善していない。権利を取得したことにより昇格が遅れ、昇給・一時金・退職金などに影響し、生涯賃金が低くなることに加え年金にも影響している。
2014年10月最高裁は、理学療法士の女性が妊娠を理由に降格されたのは均等法違反で無効とのマタニティハラスメントに対する初判断を示した。2015年11月広島高裁の差し戻し控訴審判決は、降格を適法とした一審・広島地裁判決を変更し、精神的苦痛による慰謝料も含めてほぼ請求通りの賠償を病院側に命じ、女性が逆転勝訴した。
2018年9月東京地裁は、育休中に保育園が見つからずやむなく正社員から契約社員に変更した女性が、保育園入園後に正社員への復帰を求めたのに対し、これを認めず雇い止めしたことは無効だが、正社員としての地位は認めないとの判断を示した。現在控訴中である。
提案
マタニティハラスメントの不利益取り扱いに対する罰則強化、雇用均等室などの労働行政体制の強化

雇用 11条2項c 保育施設
盛り込むべき事項
保育所や学童保育の増設が間に合わず待機児童の発生が社会問題化しているが、とりあえず容れ物を用意すればよいと、国の基準を下回る自治体独自基準の保育所が作られている。また、保育士不足も深刻で、民間では低賃金で早朝・深夜勤のローテーションがあり長く働き続けられない現状がある。保育施設の質の低下、保育人員の不足、ともに良い環境を整えるように努めなければならない。
関連資料
CEDAW2016年3月7日最終見解35(b) 柔軟な勤務形態の活用を促進するとともに、育児の責務への男性の対等な参画を奨励するため両親共有休暇を導入し、さらに十分な保育施設の提供を確保する取組を強化すること

 

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