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ジェンダー平等の視点のない「働き方改革関連法案」に反対する声明

2018年4月16日
東京都文京区本郷2−27−2 東眞ビル3階
均等待遇アクション21事務局
         kintou21@siren.ocn.ne.jp

経営者のための「働き方改革」

 安倍内閣は、今国会の重要法案と位置付ける「働き方改革関連法案」から裁量労働制の大正拡大を全面削除した修正法案を4月6日に閣議決定した。閣議決定に先立つ予算委員会の審議では、厚労省が裁量労働制に関する調査データのねつ造や野村不動産の過労自殺の労災認定を隠していたことなどが明るみに出て、政府は裁量労働制の対象拡大の削除に追いこまれたが、「高度プロフェッショナル制度」の導入は断念していない。

 安倍内閣の「働き方改革」は、長時間労働の是正と非正規労働者の処遇改善を目指す同一労働同一賃金の二つを目的としている。しかし、そのねらいは、雇用対策法の目的として新たに「労働生産性の向上」を明記し、国の施策として「多様な就業形態の普及」を規定したことでも明らかなように、経営者のための働き方改革であって、労働者のための働き方改革ではない。法案作成の過程では、ジェンダー平等の視点からの議論はなされなかった。

 

生活時間を確保する8時間労働制を

 労働時間については、長時間労働の是正と規制緩和という矛盾した労働時間法制が盛り込まれている。

 長時間労働の是正としては、時間外労働の罰則付き上限規制が新たにもりこまれたが、月100時間未満、2〜6カ月平均80時間以下という数字は、過労死認定基準が根拠となっている。これでは年間960時間まで残業させてもいいと法律で認めることになり、長時間労働の是正につながるとは思えない。時間外労働の上限規制は月45時間、年間360時間にすべきである。

 スーパー裁量労働制とも言われる「高プロ」の導入は、適用される労働者に対して労働時間の規制をすべて外してしまう。その代わりに、労働者の健康確保措置が盛り込まれるが,臨時の健康診断の実施や勤務間インターバル(休息時間)など四つの措置から一つを選べばいいというもので極めて不十分である。「高プロ」の導入はやめるべきである。

 8時間労働制は、労働基準法の根幹である。長時間労働は、労働者から生活時間を奪い、健康や命を脅かす。いま、女性たちの多くは家族や子どもたちの生活サイクルを守りながら働いており、8時間労働制はゆずれない。根強い性差別の根幹ともいえる性別役割分業を解消するためには、男女ともに家事・育児や介護など家庭責任を分担しながら仕事を続けることを可能にしなければならない。労働時間の規制は必須である。

 

同一価値労働同一賃金で格差是正を

 安倍首相は、正規・非正規間の賃金格差を欧州並みに縮小し、同一労働同一賃金を実現すると再三発言してきたが、法案に同一労働同一賃金の文言は全くない。パート労働法の均等・均衡待遇の3要件である「職務の同一、人材活用の仕組み、その他の事情」を有期契約労働者及び派遣労働者にも適用するというものである。

 しかし、3要件の中の「人材活用の仕組み」は、転勤や配転など間接性差別となる不合理なものなのでなくすべきである。「その他の事情」には、待遇差の考慮要素として新たに「職務の成果、能力、経験」が例示されるが、これらは企業の裁量による判断とされることが多く、女性を排除し男性正社員を中心とする差別構造を非正規にも拡げることになるので到底認められない。

 さらに待遇の比較対象者となる正社員の範囲を、同一の事務所から同一の使用者へと拡大する。これは同一事業所の正社員を比較対象者にした非正規賃金差別裁判で、事業所ではなく全正社員と比較して待遇格差を認めなかったメトロコマース判決を容認するような規定である。

 男女間賃金格差、正規・非正規間賃金格差は、国際基準の職務評価による「職務の同一性」で判断すべきである。国際基準の職務評価を制度化することも喫緊の課題となる。

 

女性も男性も人間らしい働き方を

 男女共同参画基本法は、その前文で「男女共同参画社会の実現を二十一世紀の我が国社会を決定する最重要課題と位置付け、社会のあらゆる分野において、男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の推進を図っていくことが重要である。」と述べている。したがって、すべての国内法は、この基本法の第三条(男女の人権の尊重)及び第四条(社会における制度又は慣行が及ぼす影響を中立的なものとする配慮)をふまえて立法化されなければならない。

 しかし、「働き方改革関連法案」はジェンダー平等の視点がなく、長時間労働を是正し、非正規労働者に公平な賃金をもたらすものではない。女性の活躍どころか、長時間労働によって女性を職場から排除し、ますます女性を低賃金の貧困へと追いやることになる。

 私たちは、女性も男性も人間らしく働ける「働き方改革」として、8時間労働を基本とし生活時間を確保できる長時間労働の罰則付き禁止と、職務の同一性で判断する同一価値労働同一賃金原則の実現を求める。

以上

 

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