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厚生労働大臣 塩崎恭久 殿
労働政策審議会
 労働条件分科会・職業安定分科会・
 雇用均等分科会同一労働同一賃金部会委員各位

 

「同一労働同一賃金」など非正規雇用の処遇改善に関する要望書

2017年5月22日
東京都文京区本郷2−27−2 東眞ビル3階
均等待遇アクション21事務局
         kintou21@siren.ocn.ne.jp

 均等待遇アクション21は2000年の均等待遇実現キャンペーン以来、「どんな働き方でも均等待遇を! 同一価値労働に同一賃金を! 間接性差別禁止を法律に! 均等法を男女雇用平等法に! 有期雇用にも均等待遇を!」の実現を求めて活動をしてきたNGOです。

 昨年政府は働き方改革として「同一労働同一賃金」を掲げ、「同一労働同膣賃金ガイドライン案」を基に3月28日に「働き方改革実行計画」を公表しました。また首相はこの国から非正規という言葉をなくすとも発言し、正規と非正規の格差の是正をアピールしています。

 このような状況のもと、東京メトロの駅売店に有期契約で働く4名の女性たちが労働契約法20上に基づいて提訴した裁判の判決が3月23日に出されました。判決は、原告らが請求したものではない時間外割増率の格差による損害と弁護士費用計4,109円の支払いを被告に求めた以外、すべての原告請求を棄却しました。この判決を女性や非正規差別の是正を願う多くの人々が注目していました。

 東京地裁は、労働契約法20上は有期と無期契約労働者の労働条件の相違について、合理的でなければならないとの文言を用いていない、労働条件の相違が不合理と評価されるかどうかを問題にしているとし、合理的な理由があることまで要求する趣旨ではないと断じました。その上で、下記のような理由により原告らの請求を全て棄却したのです。

1.原告らと同じ仕事をする正社員が18名存在するが、管理職も含めてた600名の正社員全員との比較が相当。正社員の就業規則には転勤や出向があり同一労働ではない

2.賃金(賞与を含む)は高卒の新人社員と比較し1年目77%、6年目は同経歴の正社員の69%、10年目は65%と経験を積むごとに格差が拡大している事実はあるが、両者の相違は未だ不合理なものとまではみとめられないというべき

3.住宅手当、賞与、退職金、褒賞について正社員を手厚くすることは「有為な人材の確保・定着を図る」ために「相応の合理性」、「一定の合理性」を有する

 正社員は「有為な人材」であって、非正規の契約社員は「有為でない人材」だというのでしょうか?労働者の4割が非正規で働きその7割が女性であること、女性労働者の6割弱が非正規である実体を踏まえて、このような判断をした裁判所には、差別は人権侵害であるという視点も、厚生や社会的正義を実現しようという姿勢もないと言わざるをえません。

 また昨年11月には、定年前と全く同じ仕事をしている原告らが労働法20上を基に訴えた長沢運輸事件で東京高裁は、原告の請求を全面的に認めた一審判決を取り消し、請求を棄却しました。その理由は、定年後の賃下げは「広く行われている」、「それが社会的に容認されている」というものでした。

 このような理由が「格差の理由」になるのであれば、女は安くて当たり前、パートは安くて当たり前と、長年まかり通ってきた女性差別や非正規差別は是正される道が閉ざされてしまいます。これからなくしていかなければならない年齢や障害による差別をなくすこともできません。

 私たちは現在開催中の労政審「同一労働同一賃金部会」において、「およそ人はその労働に対し等しく報われなければならないという均等待遇の理念が存在する」とした丸子警報器長野地裁判決(1996.3)を踏まえ、上記のような不当判決が出される余地がないよう明確な条文への書き込みや改正が必要だと考えます。

 非正規への不当な差別を是正し、公正な賃金が実現することを求め、以下要請するものです。

1.契約=雇用区分の壁を越えた賃金の公正な確保が、今回の法改革の基本的な趣旨であることを明確にすること。

2.雇用区分の違いを理由とする不合理な格差・取扱いを禁止すること。

3.合理性の判断枠組みを適性化すること。

  • 賃金・待遇の格差が不合理であるか否かの考慮要素の「職務内容及び配置の変更の範囲」「その他の事情」については、性別、年齢、障害その他の社会的差別となる基準(間接差別)にならないか、保育や介護のニーズへの合理的配慮に欠ける基準ではないかを検討すること。
  • 職務及び配置の変更の範囲に違いがあっても、その賃金・待遇の格差が合理的なものかの検討は、ILOが示す国際基準の職務評価を踏まえて行うこと(兼松事件東京高裁判決は国内外の配点は賃金格差の根拠にならないと判断している)。

4.使用者が、格差の原因についての説明の義務のみならず主張立証責任を負うようにすること。

5.無効とされた契約部分を補充し、是正された賃金を請求できる権利を定めること。

6.迅速かつ適正に不合理な賃金格差を解消する紛争解決手続きを確率すること。

7.派遣労働者の均等均衡処遇の実現にむけてILO181号条約を踏まえて以下を実現すること

  • 常用型と登録型の区別による賃金構成や決定内容、仕事がないときの賃金補償、一時金・退職金の違いや格差の是正
  • 派遣先社員との格差の是正

 

以上

 

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