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「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案」に対するコメント

2014年11月17日  均等待遇アクション21事務局


 労働政策審議会雇用均等分科会は、8月7日から「女性の活躍推進に向けた新たな法的枠組みの構築」に向けて審議を始め、たった5回の審議で9月末には「建議(民間部門)」をまとめた。10月7日には法案要綱を諮問・答申し、10月17日政府は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」案を上程した。法案は10月31日衆議院本会議の質疑を経て、11月12日内閣委員会で審議され、13日には参考人意見聴取と質疑が行われた。しかし、解散・総選挙という予想外の展開で、この法案は安倍政権の目玉法案であるにもかかわらず審議未了で廃案になるが、廃案になってもこの法案は次の通常国会に再提出されると思われる。

 法案は官民の事業主に「女性の職業生活における活躍」にむけた行動計画策定を義務づけるポジティブ・アクション法であるが、この法案では、首相がいうところの「すべての女性が輝く」には不十分と言わざるを得ない。一部女性の管理職登用によって、男女格差が解消したかに思われ、差別是正が進まない恐れもある。したがって、以下に指摘したポイントを踏まえて法案を修正し、実効性のあるポジティブ・アクション法にすべきである。とりわけ、法案成立後、省令・指針で策定することになっている行動計画の内容については、引き続き意見を反映させていきたい。

 

  1. 目的(1条)には「この法律は、急速な少子高齢化の進展、国民の需要の多様化その他の社会経済情勢の変化に対応していくためには、自らの意思によって職業生活を営み、または営もうとする女性がその個性と能力を十分に発揮して職業生活において活躍することが一層重要になっていることに鑑み、男女共同参画社会基本法の基本理念にのっとり・・」と書かれている。

     女性の活躍推進の目的は、少子化対策と経済成長に重点がおかれ、男女共同参画社会基本法の基本理念にのっとり…とあるが、これは本末転倒である。まず男女共同参画社会基本法の理念である「女性の人権の尊重」という文言を冒頭に明記すべきである。

  2. 基本原則(2条)にある「女性」には、正社員だけでなく、6割にも及ぶ非正規で働く女性はもちろん雇用形態や年齢、婚姻の有無など家族関係を問わず、すべての女性を対象とすることを明確にする必要がある。

  3. 2条2項には「家族を構成する男女が、相互の協力の下に、・・」とあるが、労働者の家族構成は多様化しており、単身者やシングルマザーなど様々な家族を排除することのないよう配慮した文言とすべきである。

  4. 一般事業主行動計画の策定等(8条)が定める行動計画には、8条2項で@計画期間、A取組の実施により達成しようとする目標、B取組の内容及びその実施時期、を定めることとなっている。

    状況把握、分析、計画策定の段階で、労働者・労働組合が参加し、意見聴取もしくは協議を義務づけること、結果のモニタリングについてルールを設けることを明記すべきである。

  5. 8条3項では、事業主が行動計画を定める時には、省令で定めた@採用者に占める女性労働者の割合、A男女の継続勤務年数の差異、B管理的地位にある労働者に占める女性割合その他の状況を把握し、改善すべき事情について分析した上で行うこと、目標は数値を用いて定量的に定めることを求めている。

     「建議」には、上記3項目だけでなく「労働時間の状況」という項目があったが、それが削除され、「その他の状況」になっている。女性の「活躍」には男性の長時間労働の是正が必須であり、労働時間の状況把握を明記すべきである。

  6. その他把握すべき事項には、男女の資格分布、考課結果の分布、賃金格差及び昇進の状況、職種・雇用形態・雇用管理区分毎の男女割合、男女の育児介護休業取得の状況なども盛り込むべきである。

  7. 特定事業主行動計画(15条)では、国及び地方公共団体には毎年1回行動計画の取組の実施状況の公表義務づけと目標達成の努力が求められている。

     一般事業主(民間)にもその項目をもうけ、法の実効性を高めるべきである。
                                           以上

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